教育関連事業
【日本・ニュージーランド 教員交流事業】
≪ニュージーランド公的機関支援プログラム≫
「ニュージーランド教育視察」
2009年
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日本ニュージーランドセンター企画の「ニュージーランド教育視察」は2009年度で4年目の実施となりました。
今年は、「学力向上・障害児教育」を主なテーマにニュージーランドの学校を視察しました。
受入側のニュージーランドの各学校には、訪問する日本人教員と現地のニュージーランド教員との意見交換が出来るよう機会設定を依頼し、日本人教員グループは各学校で現地教員・校長先生と昼食を共にしたり、訪問した教室で意見交換したりと、貴重な時間を過すことができました。
このプログラムはニュージーランド公的機関支援プログラムであることが大きな特徴です。ニュージーランド国の交流機関であるアジアニュージーランド基金、受入元の地方自治体・ハット市役所という二つのニュージーランドの公的機関の支援協力は、
《国の交流機関が訪問団を歓迎し参加者にこのプログラムの重要性を説明します。
受入市役所が訪問先の各種手配とともに視察全行程に市役所職員を同道させ万全の協力体制を整備します。》
このような協力により普段見られないニュージーランドの学校教育の現場を視察し、ニュージーランド教員との意見交換が可能です。
日本ニュージーランドセンターとして1人でも多くの日本の教員の方に「ニュージーランド教育視察」プログラムに参加頂き、日本と違うニュージーランドの教育の現場で現地教員との意見交換を通じて、夫々の自己啓発や帰国後の授業にこの体験を役立てていただけたらと願っています。
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●2009年度の参加者は;
関西地域の小学校、中学校、高等学校の教員や、20 代からベテランの校長先生、幼稚園の園長先生まで様々な教員の方々が参加されました。
●視察先は;
1) ニュージーランド独自の保育施設、
2) 公立特別支援学校、
3) 私立女子幼・小・中高等学校、
4) 公立共学中高等学校、
5) ニュージーランド教育省
を訪問しました。
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●プレイセンター(保育施設):
親が協働でお互いの子供達を保育するニュージーランド独自の保育システムです。
基本的に生後から小学校入学前までの子供を対象とし、親もプレイセンター連盟共通の保育トレーニングを受けます。
土地は市が提供し、NZ教育省から予算が出るので保育費は格安となっています。
預ける親も、センターでの役割が決まっていて、各子供が今日は何をしたかという記録を残す係など、プレイセンター連盟の保育プログラムに沿って系統的な保育となっています。日本も大いに参考になる保育システムではないかと思います。
砂遊びに夢中!
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●公立特別支援学校
ニュージーランド教育省の方針は、障害児は普通の学校で教育を受けることになっていますが、重度の精神的・身体的障害児はこのような支援学校で教育を受けています。
朝の集会を参観し、全教員が自信を持って障害のある生徒達に接している様子が印象的でした。
教員は専門の養護教員で人数も多く、セラピストなども配備され手厚い支援教育の現場を見ることが出来ました。
普通小学校の別棟にあるサテライト分校も訪れ、1人ずつ生徒に布団を作らせ、大きな作品を形にしていくことで、達成感を得させ成果を挙げていました。
朝の集会
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● 私立女子幼・小・中高等学校
私立の優良女子校で幼稚舎から高校までの一環校です。ニュージーランド全体のトップ5%の中に常時この学校の生徒が入っているという優良名門校です。
どの生徒に廊下で会っても、授業参観した教室でも礼儀正しい。
少人数に分かれ、小学部、中高等部芸術、英語、PCなど夫々授業参観をしました。
昼食後は4名の生徒代表と日本人教員との懇談会があり、学業・スポーツなどに優れた同校を代表する彼女達からは成績優秀・文武両道らしい自信が伺えました。
授業の教室内で
● 先生方の感想(抜粋) |
@小中高にパソコンを一人1台そろえ、パソコン用語の知識とコントラストなどを考えたWebデザインを作成していた。小学校6年のReadingとSpeechの学習内容もトピックを選び、調べ、情報を記録し構成し、プレゼンにまとめていくという展開で選んだ内容と理由を発表し興味深いものであった。子ども達のレベルも高く、ノートのまとめ方もよく整理されていた。
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A全体的な感想としてはどの学生も笑顔で挨拶し、礼儀正しさが行動に現れているところに感動した。さすが名門の私立校で伝統ある規律が守られているのだと思った。先生方への敬意をしっかり自覚しつつ、それに加えて自分の意見ははっきりと述べかつ先生方との間に非常にフレンドリーな空気を保っているように思った。
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Bさすが私立という雰囲気を感じた。きれいでゴミ一つ落ちていない校舎、パソコンなどの設備の充実。「私立」というプライドが先生方(特に副校長)から伝わってきた。
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●公立共学中高等学校:
2002年に近隣の2校が合併した公立共学校です。校長先生による学校全体説明の後、少人数グループに別れ、夫々の希望クラスを参観しました。マオリ伝統の歓迎式練習も参観できました。
同校の生徒たちが我々日本人教員グループのためにNZの代表的なお菓子・パブロバの入った昼食を作ってくれ、日本人教員達は生徒達のもてなしの心に全員感激しました。
校長、学科長、日本人留学生3人を交えた昼食懇談会は現場の教員同士の意見交換の場となり、日本の先生方も話をされていました。日本人留学生が、学校の生活を『本当に楽しい』と3人とも答えたのが印象的でした。
集中して作品製作中
● 先生方の感想(抜粋) |
@日本の高校のように入試のペーパーテストで輪切りにされるのではなく、生徒が学びたい学科を選び生徒自身の責任で問題解決しながら学習を進めていく教育のシステムが素晴らしいと思う。地域とのつながりを大切にしているのもいいし、マオリ族の生徒の誇りに満ちた迫力ある踊りに感動した。
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Aおそらく高校として抱える問題は日本もニュージーランドも同じだと思うが、その問題に対する対応に違いがあると思う。学校が教員や生徒に対して「教える」「学ぶ」といった教育の根本に関して押し付けることが一切ない。それはすべて各自の自己責任において進められていく「自由度」の高い学習環境、これが日本人留学生の「楽しい」と感じられる授業につながるのではないかと思った。
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●ニュージーランド教育省:
スティーブ・ベンソン国際部部長から、「関西からの教員の方々にニュージーランドの教育の現状をお話できることこの機会は重要。」と丁寧な説明を受けました。
参加教員の方々は、「ニュージーランド教育省へ行き担当部長からじかにQ&Aで話が聞ける機会は貴重。」と時間をオーバーするほど熱心に質問されていた。
また「自分達日本人教員が、日本の文科省に行ってもこのような丁寧な対応を受けることは難しいであろう。」とNZ教育省のこの教育視察グループへの手厚い受入を評価しておられた。
● 先生方の感想(抜粋)
@非常に丁寧な説明とQ&Aの対応の細やかさに感心した。教育のトップに立つ人が権力を振りかざして指導を強要するのではなく、学校同様、教育省も教育の中心は「生徒」であり、全ての生徒がそれぞれにあった学びを選択できるように環境づくりや枠組みを考えているところが素晴らしいと思った。
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A教育に熱意を感じた。先生達を何とかしてあげたいという気持ちが伝わってきた。子ども達を主体に考えて柔軟なカリキュラム、先生方に対するサポートどれも見習わなければならないものだと思った。形にはまりすぎないことが大事だと気付いた。
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B我々が日本の文部科学省を訪れてこのような話を聞くことはまず、在り得ない。日本より人口的に小さな国の教育行政を親しみやすく、敷居の高さを感じませんでした。
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Cプレゼンターの話が分かりやすくとても良かったです。教育省といってもアットホームな感じがし好感が持てました。
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D細かく教育指針を提示してもらえてよかった。しかし教育方法は日本と違い、生徒を全員同じレールに乗せて引っ張っていくという形は全く無かった。「考えさせる」ことを重視しているところもポイントだと感じた。
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●「Reading For Life」
(学習遅滞児への地域サポートプログラム)
社会人が、小学校の学習遅滞児をサポートし成功しているユニークなプログラムの説明を受けました。
地域社会で働いている人たちが小学校に行き、読解力を向上させる必要のある生徒達(7歳から10歳)を援助するプログラムです。
このボランティアは、訓練を受けた専門家(心理学者等)によってサポートされた人達で、10週間から15週間、毎週子どもと1対1で45分間このプログラムに参加します。学習困難や学習遅滞は様々な原因で起こり、何らかの援助が無ければ、学習困難を抱えている子ども達は将来就職の機会も少なく、ドラッグやアルコールに溺れたり、ホームレスになったりする可能性があります。
「Reading for Life」に参加した子ども達は8ヶ月で、より正しく読める力がつき、9ヶ月で読解力を深め、15週を超える6ヶ月でさらに読む力が向上しています。彼らの自尊心は高まり、保護者も学校も喜ばしく思い、ボランテイアたちも誇らしく思っているそうです。
● 先生方の感想(抜粋)
@「Reading for Life」の話は日本のこれからの支援のあり方の一つを示しているようで大変参考になりました。ボランテイアの指導書や教育プログラムのグッズが充実していると思いました。日本の教育について根本的に見直していく必要性を感じました。
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Aボランテイア活動としてトレーニングを受け、学習困難な児童に寄り添い、楽しく学習を進めていき、語彙量を増やし、読む力をつけていく活動は素晴らしいと思う。 |
B“Reading for Life”での取り組みは生活に直結するサポートが保護者・地域・社会全体を巻き込んで運営され、まさに今困っている生徒たちに救いの手を差し伸べる、ニュージーランドの生徒中心の教育体制の顕著な例だと思いました。
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「ニュージーランド教育視察プログラム」の成果
◎【 NZ公的機関の協力プログラム】
アジニュージーランド基金、ハット市役所というニュージーランドの国の交流機関、受入先の地方自治体が全面的に協力・支援のプログラムです。
受入先のハット市役所は、このプログラムに必要な訪問先の設定、通訳、バス、食事、ホテルなど全ての手配を行います。各訪問先はすべて公式訪問の受入れで日本人教員グループは手厚く歓迎されました。
◎【 日本・ NZ 教員の意見交換の貴重な機会 】
訪問する各学校では、授業の参観と共にニュージーランド教員との意見交換の場を設定し、教員同士ならではの貴重な意見交換が出来る機会を設けています。
このプログラムは単なる授業参観ではなく、現地のニュージーランド教員達との貴重な意見交換の場が設定されています。
日本・ニュージーランド教員の懇談が可能です。
今年も訪問した全ての学校で、校長による説明の後、質問の時間があり日本人教員から直接現場で学校長に質問できる機会がありました。
公立共学高校訪問では、日本人教員グループのために昼食を学生が調理し、学校長と数名のNZ教員を交え日本人教員グループとの昼食会で意見交換ができました。
◎【国際理解:ニュージーランドの歴史・文化・自然保護意識】
ニュージーランド国立博物館、マオリの伝統と歴史の集会所、ニュージーランドの絶滅危惧生物の保護(サンクチュアリー)を訪問することで ニュージーランドの国の歴史・伝統・自然保護のニュージーランドへの国際理解を深めていただくプログラム設定です。
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以上の点から、一人でも多くの日本人教員の方に
このプログラムへの参加を呼びかけ、
今後とも日本・ニュージーランド間の教員交流事業として
継続実施し発展させていきたいと願っています。
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産経新聞に掲載された、
ニュージーランド教育視察の連載記事
「富国教育・ニュージーランドからの報告」 第1回ー第3回
2009年9月14−9月16日版
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● 先生方の感想(抜粋) |
@このプレイセンターの考え方が素晴らしいと思う。子ども同志だけでなく、保護者同志も他の保護者から学び知り合い、信頼関係を築いていけるという視点は子育てに悩む日本の就学前乳幼児の保護者を救うことが出来ると思う。のびのびと見守りつつ遊具や工作用品、外遊び、絵本の読み聞かせなど育児を楽しんでいる様子だった。
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A日本の保育施設と比べて大きな違いを感じました。幼保一元的であるのに月齢等によるクラスわけが無く、何より保護者が入り込んでいることに驚きました。子ども3人に対して大人1人という割合も日本では難しく、軽いショックを受けました。
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自分の作品を披露する生徒
● 先生方の感想(抜粋) |
@朝の集会の様子を見て、色々な遊びや歌などを通じて言葉や社会性を身につけさせようとする方針を理解した。一人一人がそれぞれの困難さを抱え、それを正しく理解し対応しようとしていた。
サテライトといわれる教室においても小学校に併設された教室で少人数でそれぞれにあった課題をこなし、生まれた時から困難を抱えている子供も明るく過ごしている姿とそれを支える先生方の優しさに感心した。
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A自閉症、情緒障害児、ダウン症などの生徒達が学んでいるところを視察してスタッフが充実していることに驚いた。担任の先生のほかにセラピストやアシスタントがいて生徒達に丁寧にきめ細やかな対応がなされていることが印象的であった。
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コーラスを披露!
日本人教員との懇談に答える
学校代表の生徒達
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日本人教員グループのために
昼食を用意してくれた生徒達
美術の授業風景
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ニュージーランド教育省 国際部プロジェクトマネジャー、
Mr Steve Benson の説明
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「Reading For Life」 キット
「Reading For Life」
コーディネイターのシャナハンさん
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